「比較」から離れて、自分たちのペースで。
四方 正道(しかた せいどう)さん
出身地:神奈川県
職業:農業
蒼ファーム公式サイト https://www.aoifarm.jp/
蒼ファームinstagram https://www.instagram.com/aoi_farm/
四方 静香(しかた しずか)さん
出身地:富山県
職業:会社員
四方さんご一家は、コロナ禍を起点に、横浜市から富山県入善町へ移住。人と比べることから少し離れ、豊かな自然に囲まれながら自分たちのペースで心地よい暮らしを営む。そんな四方さんご夫妻に、移住を考えたきっかけや富山での暮らし、そしてこれからの目標についてお話を伺いました。
移住のきっかけ
四方静香さん(以下、静香さん): 横浜市でラーメン屋を営んでいたんですが、2020年くらいに新型コロナウイルスが流行って、まん延防止対策で営業時間が短くなったんです。その時まで主人は、朝、子どもたちが学校へ行ったり、保育園行ったりしてから動き出して、夜は子どもたちが寝静まった時に帰ってくる生活だったので、土日ぐらいしか会う時間がなかったんですけど、営業時間が短くなったことをきっかけに、家族の時間を意識するようになりまして、2022年に入るぐらいからちょっと(移住について)意識をしだして。有楽町の富山くらし・しごと支援センターに行ったりして、移住に動き出しました。一番は家族の時間を意識して。富山でゆったりとした時間を過ごせたらいいなっていうところです。
‐富山県以外も検討されましたか?
四方正道さん(以下、正道さん): 妻はゆくゆくは富山に帰りたいって言ってたんで、そこしかイメージなかったんですよ。ただ、横浜でずっと生まれ育ってたんで、横浜から出るつもりもなかったんですけど。コロナをきっかけに、生活の基準が全然変わってきちゃって。
僕の親もずっと飲食店経営してて、(日中)親がいないっていう生活が当たり前の環境に育ったんで、今まで子供達との接点が少ないことはそれが当たり前だったんです。でもコロナ禍で家族との時間ができて。改めて、あ、こういうことできるようになってたんだって子供の成長に気づかされて。
仕事の面でも、お客さんに求められるものがだいぶ変わってきてて、自分でやってても正直面白くなくなってきたタイミングでもあったんですよ。自分のモチベーションも上がってこない中で、続けるのはどうなのかなって考えたり、結構「考える時間」が増えてきて。
富山ってどういうところなのか、ちょっと話聞きに行くのもいいかなと思って。今思えば他の県を見るのも良かったのかなって思ったりしますけど(笑)奥さんの地元の富山県っていうところが、移住するには一番スムーズかなっていう感じはありましたね。一回移住しやすい所へまず行ってみて。合わなければまた戻ってもいいし、他行ってもいいかなっていう気持ちでしたね。
‐移住時、お子さん達は何年生でしたか?
静香さん:小学校三年生と、一年生です。
‐お子さん達は移住することは大丈夫でした?
静香さん:そこまで嫌だっていうのは、その時は言わなかったんですけど。後々、「実はちょっと不安だった」みたいな話は聞いたんです。当時本人は、パパママが行くんだったら、まあそれはしょうがないっていう風に言ってましたけど。
正道さん:奥さんの(地元の)友達の子どもが同い年で、定期的に富山帰ってきた時は会ったり遊んでたりしてて。この子がいるんだったらっていう感じもあって、まだ移住しやすかったのかなっていうのはありますね。

富山に移住して良かったこと
静香さん:良かったことは、やっぱり食べ物が美味しいことと、何もないけど、時間にゆとりがあって、景色を見るゆとりがあるのが、私はすごく贅沢だなと思ってるんですけど、どうですか?
正道さん:時間に余裕ができたってのはすごいありますね。ちょうど昨日、横浜から帰ってきたんですけど。やっぱ向こうは向こうでいいんですけど、もう何かに追われてるというか。それがこっちに来てからは無いですね。働いている環境もあるかもしれないですけど。「この時間にこうでああで」っていうのも、そこまでなく。朝日が昇ったら起きて、暗くなったら寝てっていう。のほほんとしたというか。
‐夜って暗いんだなって思いますよね。
正道さん: でも新幹線乗ってこっち(富山)帰ってくるとなんか寂しいなって感じて。真っ暗だから。でもそれがいいのかなと思いながら。

富山に来て大変だったこと、苦労したこと
正道さん: 苦労したことは、別に。でも方言は、慣れるまでは苦労しました。最初は結構年配の方と会う機会が多かったんで。
あと雪ですよね。去年除雪隊にデビューしたんですけど。横浜だとまずやらない仕事だったんで、結構プレッシャーというか。寝てると除雪車の音が聞こえる。行かないといけないんだって。それが慣れるまではちょっと大変かな。
静香さん:雪の運転は、私も慣れてなかったので。初年度は大したことなく、その翌年どかっと降って、結構それが怖すぎて、こんな身を削って出勤する必要があるのかなってすごく思って。 ちゃんと就業時間に間に合うように行くって、そこまでする必要ありますか?と思いますけど、(笑)富山県では当たり前なんでしょうね。 今年の冬もすごく不安ですね。


今後の目標やビジョン
静香さん:こっちに来てからキャンプやろうってテントを買ったんですけど、まだ一度もできてないので、キャンプをやるっていうのが身近な目標ですね。子どもたちもちょっと成長しちゃって、上の子は部活だったりとか。一緒に過ごす時間がどんどん減ってきてるなって思ってるので、できる限り時間作れる時は家族で出かけたり、今しかできないようなことができたらいいなと思ってます。
正道さん:近隣の県に遊びに行くってことも。今年から足伸ばして、いろいろ散策できたらいいなあと思ってます。
‐正道さんは農業で、何を作られているんですか?
正道さん: お米と大豆がメインなんですけど。それ以外は野菜をやってますね。来週から大豆の刈り取りが始まるんですけど、これ終わったら今度にんにくの定植と。あと冬はカリフラワー。入善町の特産品にしようっていうので、「ゆきまる。」だっけ。そんな名前で出してるんですけど。

‐農業の方での目標はありますか?
正道さん: 今年から大豆のコンバインに乗る予定なんですよ。まず、それに乗れるようになるっていうところが目標ですかね。
静香さん:主人の横浜の友達とか、関係者の方に自分のところのお米をPRしてて。
正道さん:会社の名前を広げたいっていうところと、富山県って意外と(米どころとして)認知されてないじゃないですか?どうしても新潟に持ってかれてるところがあるから。富山県、入善町をもっと知ってもらえたらいいなあと思って。友達とかに言って広めてもらってるところなんですけど、スーパーで買ってるお米と比べても断然違うって言ってて。お米が嫌いなお子さんが結構多いらしいんですけど。うちのお米食べたら、ご飯食べる量が全然変わって、今までの量じゃ足らなくなったって。
‐めちゃめちゃいいですね。それ。
正道さん:あとは会社の方針と合うかっていうところにはなってくるんですけど、入善町でイベントやマルシェをやりたいなっていうのが、目標ですね。で、横浜の方に僕らがお米を持ってマルシェとかに飛び込んでいきたい。ラーメンはまあ趣味でやれればいいから、イベントとかでね、ラーメン祭りとかああいうイベントで。
‐ラーメン祭りありますもんね。
移住を考えている方へのメッセージ
正道さん: 僕友達によく言うのは「思っているほど田舎じゃない」って。なんか「田舎=自給自足」で山奥とかに住むってイメージがあるらしいんですよね。そうじゃなくて、買い物とかするような場所もちゃんと揃ってるし。仕事先も探そうと思ったら全然いくらでもあるし。東京の仕事をリモートできるんだったら持ってこれるし。
僕も悩んだときに、結構色々考えたんですよ。友達と会えなくなるとか、今の利便性が無くなるのどうなんだろうとか。例えば映画館がすぐ近くにあったのが無くなるとか、スターバックスがすぐ近くにあったの無くなるとか。でもそこまで生活してて必要じゃないものも結構多かったりして。新幹線ですぐ東京とかにも帰れるし、生活が変わらないことも多かったから。
移住を本当に考えてる人は、自分が何を基準としているかを考えてもらうのがいいのかなって思いますね。そうしたら意外と自分が悩んでるのも悩む種じゃないというか。住めば都っていう。騙されたと思ってね。来るのがいいのかなって思いますね。
‐静香さんはどうでしょうか?
静香さん:生まれが富山県なので、都会の「人と比較して生きる」っていうところが多少辛いっていうか、プレッシャーなこともあったので、そういうものから解放されて、自分がいいなって思う暮らしが選択できるっていうのが、その場所がどこであれ、自分自身の気持ちを優先してもらったらいいのかなと思ってて。私はやっぱりこの富山の豊かな自然が大好きなので。それに囲まれて暮らせるだけですごく心が落ち着くというか、優しくなれます。穏やかになりますね。
正道さん:こっちにはこっちのしがらみもありますけど。僕、趣味でサーフィンやったりするんですけど、対自然じゃないですか。その自然に囲まれてると、自分の中で考えてる事がちっぽけだなって思う時、結構あるんですよ。 向こう(都会)にいると、「同い年のあの人がここまでやってんのに自分はどうなんだろうか?」とか、比較してしまうところがあるんですけど。海に入ったり自然見てると、ああ、別に比較しても意味ないなって思わされるというか。考え方だけどね。
静香さん:意識高いじゃないですか、都会の方は。今となったらそれも良かったのかもしれないって思う部分もあるんですけど、それでも生活レベルを比べるってなった時に辛かったりとか。受験もね。都会だと早ければ小学校、幼稚園の子もいるかもしれないし、塾だってね。当たり前のように小学生から塾行って遅くまで勉強してっていうのが、そんなちっちゃい時からやらせなくてもいいんじゃない?っていう思いが強くて。でも、それだと、輪の中から外れてしまうんじゃないかと思って、納得が行かないけど、やらなきゃってこともあるなあと思ってて。
逆に、富山来ちゃうともう、ジャングルっていうか、そんなに整ってなくて大丈夫っていう。子ども達も野生味が強すぎて、それはそれで、どうかなとかも思いつつ(笑)まあ、うちはうちの方針。自分たちのペースで進めようかなっていうところはありますね。
暮らす場所を変えることは、大切なものを見つめ直すこと。四方さんご一家の歩みは、移住を考える方のヒントになりそうです。人と比べず、自分の「基準」を見つめなおして、自分らしい暮らしを探してみませんか?
四方正道さん、静香さん、ありがとうございました。
取材日:2026年10月5日
