日常の風景を伝えたい

野田 健二 さん、夏海さん(のだ・けんじ、なつみ)

出身地:愛知県
現住所:南砺市 移住年:2017年
職業:農業、会社経営
野田 夏海さんのSNS YouTubeInstagramFacebookXブログ

愛知県一宮市で生活をされていた野田さんご夫妻。移住しようと決めてから、南砺市にある築150年の古民家にめぐり逢うまでのエピソードを伺いました。また、移住後、富山に魅了され続けているご夫妻は、健二さんは農業、夏海さんは国内外のモノを販売されるお仕事の傍ら、「たくさんの方に富山を知ってもらいたい、来てもらいたい」という一心で、SNSで情報発信をなさっています!

直感で決めた移住

愛知県一宮市でお住まいだったご夫妻。夏海さんが入塾されていた起業塾の勉強会が、たまたま富山市で開催されることになったそうです。初めての富山。車の運転が好きな夏海さんは、東海北陸道を車で走らせ富山へ向かいました。

その途中、走りながら目に飛び込んできた散居村の景色。

なんてキレイなんだろう、ステキな場所なんだろう、、、とすっかり魅了されました。

建物の瓦も他の地方では見たことがない、真っ黒でお城のような屋根瓦がある!

お城や神社が好きな夏海さんは、ここだったら神社のように木々に囲まれた家で暮らせるんじゃないか、ここに住みたい!と強く思ったそうです。

その後、愛知に戻られてすぐに「富山に移住するけどどうする?」とご主人に伝えられました。会社員だったご主人は驚くばかり。「ちょっと待て!待て!」動揺と不安を隠しきれません。

夏海さんは「百聞は一見に如かず、見てもらわなきゃ話にならない」と、翌週、ご主人と一緒に再度、南砺市を訪問されました。

「ね、いいでしょ、いいでしょ」と夏海さん。ご主人もすっかり引き込まれ移住へと気持ちが向かい始めたそうです。

築150年の古民家とのめぐり逢い

まずは家探し。

希望は、『かいにょ(屋敷林)』がある家であること。そして、ご主人が農業を始められるために必要な大きな納屋があること。

まずは、南砺市役所『南砺で暮らしません課』で相談。南砺市の空き家バンク、不動産屋、多くの物件を見て回られましたが、なかなか希望の物件がありません。

そんな時、移住者の先輩である地域おこし協力隊の方から「不動産屋さんに出ない空き家も沢山あるので、地元の人と顔馴染みになって紹介して貰うと良いよ」とアドバイスを受けたそうです。それをきっかけに、月に1度は南砺市へ通い、さまざまなコミュニティを訪ね、地域に馴染みながら地元の方からの情報を集めました。しかし、理想の物件に辿りつきませんでした。

ご主人の退職も決まり、とにかく移住しよう!移住してから家を探そう!と市営住宅に申し込もうとしていた矢先、たまたま「家を出るので住みませんか?」との声がかかりました。

早速、物件へ。待ち合わせ場所へ向かいながら『かいにょ』に囲まれ、納屋と蔵がある家が見えました。「あの家、ステキだねぇ~」という会話をしていたら、なんと、その家がその物件でした。

「地域のご協力があったからこそ、この家にめぐり逢えました!感謝の気持ちでいっぱいです。」

ワクノウチと囲炉裏

富山でのしごと・くらし

健二さんはずっと名古屋で育ち土を触ることもなかったそうですが、移住後、2年間の農業研修を受け、今年(2020年)から一本立ち。専業農家として、春はアスパラの栽培・収穫、今は、秋に向け柿の栽培をされておられます。

また、冬季は近くのスキー場でアルバイトをされておられます。富山に来るまではスキーの扱い方もわからなかったそうですが、地元の方々に教えていただき、基礎を身につけられました。

アスパラ畑で作業中

夏海さんは、国内外のモノ(陶器、伝統工芸品、電化製品など)を仕入れ・輸入し、販売されておられます。

今のオススメは、信楽焼のコーヒーポット。直接ポットにコーヒー豆を入れお湯を注ぐことで、フィルターなど他に干渉されず、急須のようにコップにそのまま入れることができるので、コーヒー豆本来の味がするそうです。

信楽焼のコーヒーポット

富山の伝統文化の情報発信

夏海さんは、富山に移住して、初めて見た井波彫刻の欄間に感動され、これだけ手間のかかっている彫刻、しかし後継者がいないとう問題もある、この技術を承継するため、もっと多くの方々に知ってもらいたい、と考えられました。

夏海さんは、もともとインターネットやパソコンが大好き。これだけネットが普及している時代、田舎も都会も関係ない、そして持ち前の行動力で、「Google Mapを作りませんか?」と井波彫刻会館に飛び込みオファー。Google Mapでの情報発信を始められました。

井波彫刻師さんの動画を撮り、お土産品の紹介、周辺の風景、口コミもあり。井波彫刻の素晴らしさをもっと知ってもらいたい、という思いで発信されました。

*Google Mapで「井波彫刻会館」を検索下さい。

日常の景色を伝えたい

また、日常の風景が素敵すぎる、と感じているご夫妻。

しかし、写真だけでは伝わらない部分もある。であれば、動画はどうだろう、と考えられました。

ただ、ひたすら農作業をする風景、稲穂がそよぐ風景、窓を開けるとホタルが舞っている、雨上がりの虹、雲の流れなど、写真では伝わらない「空気感」をそのまま伝えたい、と写真や動画を発信されています。(*下記リンク集参照)

今年はコロナの影響により、帰省できなかった若い方々から、「動画を見てとても懐かしい気持ちになり、オンライン里帰りが出来ました。」とコメントがあったり、「ここの景色が見たい」というリクエストをいただいたり、とても嬉しかったそうです。

富山に来てよかったコト、驚いたコト、いろいろインタビュー

―移住されてよかったコトは何ですか?

とても静かで、わざわざ見にいかなくても満天の星を見ることができます。

何よりお水が美味しい!同じお米でも水が違うと格別に美味しくなりました。移住前はパン派でしたが、富山に来てからはご飯ばかりです。今は、ご近所さんから買わせていただく無農薬のお米を食べていて、もう他のお米は食べれなくなりました(笑)

お魚も美味しい。祖父が漁師だったので太平洋側の新鮮なお魚を食べていましたが、富山のお魚は味が違いますね。荒波に揉まれているので身が締まっていて、味が濃いです。

―気候はどうですか?

移住して初めての冬は何十年ぶりの豪雪の年でした。雪掻きも初めての経験でとても大変でした。でも、雪が降っている方があたたかく感じることに気が付き、雪が降らないと、そろそろ降ってくれないかなぁ、と思うようになりました。また、南砺市は除雪が完璧で車の運転には全く困りませんでした。

あと、天井も高いので、一般的なストーブを使っても温まらず、今年はご近所さんにいただいた練炭火鉢も使いました。手あぶり火鉢もいただいたので、次の冬が楽しみです。

思ったより夏は暑いですが、風がよく通るので、窓を開けていると涼しいです。

また、湿度が高いので、髪質もとてもよくなりました。空気もキレイなので、アレルギーもあまり出なくなりました。

―驚いたコトは何ですか?

寒さでプリンターが動かなくなったことに驚きました。『気温が低すぎます』『部屋をあたためて下さい』というエラーメッセージを始めて見てびっくりしました(笑)

―苦労されたコトは何ですか?

土地勘がないので、移住直後にお店探しに苦労しました。ホームセンターへ行くのに山を越え金沢に出かけたりしましたが、食料品が安いお店なども近所の方に聞いたりして少しずつ地元に馴染んでいきました。

また、移住前に使っていた銀行が富山県内になく、困りました(笑)

―地域の方とのお付き合いはどうですか?

ご近所の方々がほんとうによくして下さいます。こんな時はどうしたらいいんだろう?ということがあっても、すぐ教えて下さいます。閉鎖的な部分も多いかなと思っていましたが、とても歓迎して下さり、本当にありがたいです。

特産展のお手伝い、山ブドウの収穫や田植えなどの農業体験、コーヒー豆の焙煎、陶芸家さんが山奥の穴釜で作品を焼くのを見学させていただくなど、いろんなコミュニティから呼んでいただき、どこへでも行っています。

特に地元のお母さんたちに教えていただいているお料理教室が楽しく、郷土料理の作り方を教わったりしています。

―方言はどうですか?

最初は聞きとることも出来なかったですが、最近は「なーん」(いいえ、違う、全然)は言えるようになってきました。

特に「きのどくな」(申し訳ない、ありがとう)と言われた時には驚きましたが、本当に気の毒なことは何ていうんだろう?と地域の方に聞くと「いとしい」と。なんてステキな言葉なんだろうと思いました。

あと、ギックリ腰になった時に「やわやわ」(ゆっくりと、そろそろ)やね、と。この方言の意味を知り、生活もいろんなコトを「やわやわ」楽しんでいきたいと思います。

―これからの目標は?

富山県内には歴史のある町も多く、ステキなところがまだまだあります。そんな町並みを、ただ歩くだけの動画も撮りたいと考えています。

地域のお母さんたちに教えていただく料理も、地域の方と共同で本として残そうとしていますが、動画でも残していきたいです。

また、いろんな富山の姿を知ってもらい「富山に行ってみたい!」と思ってもらえるような情報を発信し続けていきたいです。

あと、富山弁をもっと話せるようになることが目標です。

移住を考えておられる方へのメッセージ

「移住者の先輩である地域おこし協力隊の方からのアドバイスは、『今すぐ移住する日にちを決めること』でした。

夫の仕事の引き継ぎの関係で「すぐ」には引越しができませんでしたが、その言葉は正しかった、と今でも思います。夢には期限をつけた方がより叶いやすくなると実感しています。

移住するまでは不安な部分は大きいかも知れないですが、移住したら何とかなりますよ。

富山県内は仕事には困らないし、生活費も安く野菜はもらえたりします(笑)

あとは、地域の方々や移住の先輩が見守ってくれているので、その方々が手助けしやすいように、移住をしたら一人で頑張らないで『助けて』と言えると良いかな、と思います。」

お庭と、自生していた大きな山椒の木

お気に入りのモノ

井波彫刻のネズミ
五箇山和紙でつくられたヘビとうさぎ
五箇山和紙でつくられた招き猫