好きなまちでのんびり暮らす

坪谷 菜摘さん(つぼや なつみ)

出身地:東京都
現住所:朝日町 移住年:2022年
職 業:自営業(民泊たなごころ 宿主)
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春になると色とりどりの花々が四重奏を奏でるように咲きこぼれる絶好のロケーション。
田んぼや畑に囲まれた長閑な環境の中、愛猫のねねちゃんと共に「民泊たなごころ」を運営されている坪谷さんにお話を伺いました。

移住のきっかけ

元々、老後は田舎でのんびり暮らしたいなあ、という思いがありました。
そんな中、コロナ禍でフルリモートワーク化が進み、周りの同世代で地方移住や2拠点生活を始める人が増えたんです。それを見て、「老後じゃなくても良いかも」と考えるようになりました。
漠然とですが、日本海側の海辺のまちに住みたいという希望と、東京に帰りやすい場所がいいなという思いから、新潟・富山・石川あたりを考え始めました。
その中でも富山だけは1度も行ったことがなかったので、「くらしたい国、富山」というサイトを見たりして調べました。色々なページを見る中で、とりあえず1回行ってみようと思い、友達と一緒に富山市と南砺市へ観光に行きました。そうしたら想像以上に自然豊かで、海もあるし、山もある。ごはんも美味しくて、人もとても親切。「ここはいいな」と思い、富山に的を絞って移住先を探すことにしました。

―なぜ朝日町へ?

実は、移住先として「富山がいいな」以外はなにも決めていなくて、東京のふるさと回帰支援センターに相談しました。
富山に移住したいということ、農業をしてみたいということを伝えると、地域おこし協力隊という制度で農業の教育に力を入れている朝日町を紹介され、1回行ってみたらと勧められたのがきっかけです。

朝日町の相談員の方に車で町を案内してもらっていたとき、「ここは春には四重奏っていう景色が綺麗に見える場所だよ」と教えてもらいました。
そのとき、ちょうど山がすごく綺麗に見えていて、「こんなところに住めたら最高だな」とポロっと言葉にすると、相談員の方が1軒の家を指さし「あそこの家もうちょっとで空くから住めるよ」「え!こんなおっきい家1人で住めるんですか?」「うん、住めるよ」って話になって。
もう、そこから「朝日町に住みたい」という思いが強くなりました。

初めて朝日町を訪れたときに感動した景色。雪がついた山々が綺麗です

仕事についても相談員さんに尋ねられ、「東京で企業のSNS運用をしていた」と伝えると、「情報発信できる人を探しているから、地域おこし協力隊として一緒に活動しませんか」と誘っていただいたんです。
そこからとんとん拍子に朝日町への移住が決まりました。

その後、地域おこし協力隊を卒業し、2024年から民泊たなごころを開業しました。SNS運用の経験は、今も宿の情報発信や集客に役立っています。愛猫のねねちゃんは看板猫ならぬ「宣伝部長」として大活躍してくれていて、ねねちゃん目当てのお客様もいらっしゃいます。

看板猫ならぬ宣伝部長のねねちゃん
さりげない接客でお客様をおもてなしします

移住してみて良かったこと

移住前は、知り合いが1人もいない土地での人間関係だけが不安で、「よそ者が!」みたいな感じでご近所づきあいがうまくいかなかったらどうしようと思っていました。
でも、朝日町の人たちは温かく、移住して間もない頃、町内会の草刈りに参加した際には、皆さんから「若い人が移住してきた。町の宝だ!」と喜んでもらえました。町内会の草刈り・えざらいは年に3、4回あるのですが、自分の中では楽しいイベントだと思っています。

つい先日、参加した地区の運動会では、小学生からお爺ちゃんまで老若男女問わずみんな必死になって玉入れとかしている様子がとても素敵だなと思って。東京では学校以外での運動会なんてなかったから、とても新鮮でした。
地域の方々とは、近すぎず遠すぎず、ちょうどいい距離感です。

最初は不安だった地域活動も案外自分は楽しんでやれるタイプだと気づき、自分にこの環境がすごく合っていて良かったと思います。

富山に移住してからできた趣味

最近、趣味は何ですか?と聞かれたら、「ホタルイカ掬いです」って答えています(笑)
そこでたまたま会った知らないおじちゃんが「ホタルイカを餌にして釣りをするとすんごい魚が釣れるんだよ」って教えてくれたり、地元の人たちとの他愛のない会話が楽しいです。富山ならではの体験ですし、もっと推していきたいですね。

富山に移住後ハマっているホタルイカ掬い。特に爆わきの日はテンションが上がります
近くの山に友達と登山に行くことも

移住して大変だったこと・苦労したこと

北陸独特の冬の気候に慣れるのが大変です。
東京と比べ、すっきり青空の日が少なくて、しんどいなと感じることがあります。
でも、その分春の喜びもひとしおです。3月には家の前のチューリップが咲きだし、ホタルイカ掬いもできる、山菜採りも始まる。楽しくて忙しい春が待ち遠しい。
冬はその楽しみに備えての冬眠期間なのかなと思って、その期間をどう快適に明るく過ごしていくかを模索中です。

―雪の暮らしはどうですか?

私が暮らしている周辺では、雪で困ることはほとんどありません。
東京よりは当然積雪量はありますが、雪かきは年に数回程度ですし、むしろ雪が降ると視界が明るくなるので嬉しく感じます。

道路には消雪装置(※)もありますし、雪道での車の運転も慣れました。
そもそも、東京で暮らしているときはほぼペーパードライバーで車をバックで駐車することもままならない状態でしたが、東京と違って交通量も少ないし、道も広いので、今ではすっかり慣れて、運転で困ることはないですね。

※消雪装置…地下水をポンプで汲み上げ、路面に散水して雪を解かす装置

これからの目標

やりたいことはたくさんありますが、まずは宿で地元の食材を使ったお食事を提供したいですね。富山はお米もお魚も美味しいので、自分で海や山の食材を集めて、お客様に提供できたら最高だなと思っていて、それを実現させることが目標です。

坪谷さんとねねちゃん

移住を考えている方へのメッセージ

気になっているところがあれば、まずは1回現地を見に行ってみるといいと思います。
インターネットだけではわからない情報がたくさんありますし、相談員さんや地元の方との出会いから、運命の場所が見つかるかもしれません。
漠然としたイメージのままでもいいから、相談してみてほしいなと思います。
もちろん、私のところに来てもらえるととても嬉しいですし、お宿に泊まってもらってもいいですしね。相談に乗りますよ。田舎のおばあちゃんの家へ遊びに行くような気軽さでぜひ遊びにいらしてください。