射水市在住の山崎祐介さんは富山高等専門学校の非常勤講師(名誉教授)として学生の指導にあたられています。
山崎さんの社会人スタートは国際航路の航海士。
船乗りになって3年後、冬のアラスカ沖で遭難。
幸い命を落とすこともなく、怪我もありませんでした。
その後、海技大学校へ講師として派遣されます。
自身の遭難経験から、独学でヒューマンエラーについて研究をはじめ、2001年にインシデント(未然事故)研究により日本航海学会優秀論文賞を受賞。
2004年にはインシデントに関する出版により住田海事・海事史奨励賞を受賞されました。
—富山暮らしを選んだ理由は?
両親の介護のため、実家のある愛知県西尾市に戻ったのですが、その後、両親が他界。
大学に復職を希望してもポストがなく、1年の予定で富山高等専門学校商船学科の助教授として赴任しました。
家族も一緒です。
2年後、海技大学校へ復職のチャンスがあったのですが、住所を転々とするのは、子どものためによくないと思い、冨山で暮らすことを選びました。
大学に復職するのも魅力でしたが、それ以上に、富山に住むことで得るものは大きいですよ。
子育てには土の匂いのする環境がいいですよ。
水が美味いと米が美味い。米が美味いと酒が美味い。趣味の海釣りも楽しめる。
冨山には海、山、緑がたくさんあって精神的にほっとする。これは大変ありがたいことです。
東京までは空路で1時間、大阪にはJRで3時間。
静かに研究したものを都会で発表すれば、(田舎でも)勝負できます。
—住まいはどうされましたか?
富山に住む気持ちが高まった頃に、富山県の団地売却の公募に当たったんです。
それまでは官舎住まいでしたが、土地を購入して家を新築しました。
都会と比べて地価が安く、土地を求めやすいんです。
私の住んでいる射水市は、地域のつながりが強くて、伝統行事のお祭りにも子どもの頃から参加できる。
そして自分の子どもと分け隔てなく、教えて育ててくれる、古きよき日本があります。
富山は第二の故郷。30年経験したのだから間違いないと思いますよ。
私にとっての富山暮らしの魅力は、突き詰めれば、お金や名誉を優先して求めない、本物の豊かな生活。
都会の友人達はみな羨ましいと言っています。
—富山県民の印象は?
富山の人は質素で勤労意欲が高い。
勉強する意味やその価値もわかっている。そのあたりが文化的だと思います。
これは伝統文化が背景にあるからだと思うんです。
私の住んでいる射水市新湊は万葉集に詠われたところ。歴史的にも客観的な評価がされている場所です。
富山に来る時に、妻の母が「あんな寒いところ」と言いましたが、雪が降るとアダモの「雪が降る」をカラオケで歌いますし、自然(雪)は大変だけど、ここらは除雪が行き届いているので、あまり不便は感じませんよ。
現在(私は)夫婦、犬14歳、猫15歳とゆったり暮らしていますが、子供たちはそれぞれ独立して、自分の夢を仕事にしています。
長男は井波町で彫刻の仕事、長女は新潟に嫁ぎましたが(引き続いて)音楽活動をしています。
二男は自然と接するのがいいと言って、庭師の国家資格を取得して、仕事をしています。
富山の環境がそうさせたのだと思います。
—田舎暮らしのために必要なことは?
富山は就職先が少ないようですが、高給を得るために、都会で我慢して暮らしている人もいます。
社会貢献が第一目的というなら少しはわかりますが、お金や物を中心にすると失うものが大きいと思います。
もっと、違う価値に目を向けてほしいですね。
若者は高学歴・高収入志向ですが、年を重ねると故郷に戻る人が多いようなので、若い世代に富山の魅力や地元に根付くような人生の価値観教育をする必要がありますよ。
現在は学生指導の傍ら、船舶安全学を確立された山崎さん。
研究成果として2006年に専門書「海事一般がわかる本」出版されました。
これからも、ますますのご活躍をお祈りしています。