東京都出身の坂口直子さんは、2007年に祖父母が暮らす朝日町へ孫ターン。
交流体験型の複合施設『なないろKAN』のスタッフとして6年間勤務し、この4月、かねてより思い描いていた夢を実現するために退社。
五叉路の商店街近くで、ハーブと喫茶『HYGGE(ヒュッゲ)』をはじめることに。
朝日町に移ったばかりのころ、「私自身が一番ほしかった場所」という坂口さんからお話を伺いました。

 

17坂口 直子さん

 

—富山に移住するまでのいきさつを教えてください。

最初は移住というほどのことではなく、なんとなく思い立ったという感じでした。
実家のある東京で就活をしていましたが、やりたい仕事の募集がなく、中途半端な状態。
それなら、富山で祖父母が二人暮らしをしているので、生活の補助をしながらしばらく暮らしてみようかと。
それまで祖父母と暮らしたことはありませんでしたが、二人とも高齢だし、今一緒に暮らさないともう機会がないかもしれないと思ったんです。

 

—富山での暮らしはいかがですか?

朝日町に来て驚いたのは、人がいない、なにしろ若い人がいないことでした。
実際は若い人もいるのですが、知り合う場所や機会がありません。
また、人口が少ない半面、住人同士の関係がすごく密なことにも驚きました。
私の場合は、祖父母がずっとここに住んでいたので、ご近所にもわりとすぐに受け入れてもらえましたし、慣れると、こういう感じもいいなと思うようになりました。
富山の良さは、食べ物がおいしい、景色がいい。
それらは、お金で買えないし、都会では得られないもの。
たまに東京へ行くと、すごく閉塞感があり、お魚など食べ物の鮮度も落ちます。
富山に帰ってくると、米も魚も水も空気もつくづくおいしくて、「ゼイタクだなあ〜」と思います。
冬になると雪が降るのが不利だという人もいますが、私は富山に来てからスノーボードをはじめたので、冬になると「降れ、降れ」と思っています。
スノボの後の温泉も本当にゼイタクですよね。

 

—『なないろKAN』ではどんなお仕事を?

朝市の事務局をしたり、ヒスイひろいツアーなどのイベントを開いたりしていました。
なないろKANで働いた6年間は、いろんな経験ができ、人とのつながりもできました。同世代の友達も増えました。
ただ、組織の中で自分のやりたいことを100%するのは、やはり難しいです。
考えた結果、自分でお店をはじめようと思ったんです。

 

—ご自分で喫茶店をはじめようと思ったのはいつごろですか?

3年ぐらい前から、いつかやりたいと思っていましたが、決断したのは去年の秋です。
昨年、祖父母がつづけて亡くなり介護が終わったこと、自分も地域でネットワークができてきたこと、やりたいことがあるなら若いうちにはじめた方がいいという周りのアドバイスもあり、このタイミングになりました。
朝日町に来たころ、同世代の人と知り合う場所がなく、ちょっとおしゃべりしようと言っても気軽に立ち寄れる場所が近くにないのが寂しいと思いました。
昔から住む人も、新たに住む人も、気軽に交流できる場所をつくりたいというのが最初の想いです。
それを商売としてやっていこうと考えた時、喫茶店が思い浮かびました。

 

—開業までどんな風に進めてきましたか?

建築設計事務所の知り合いに、よい場所がないかと相談したところ、たまたま空き家になっていた建物を借りられることになりました。
立地もよく、あいの風鉄道「泊駅」と商店街にオープンしたばかりの複合施設「五叉路(ごさろ)」とのちょうど中間ぐらいにあります。
まちなかですが、目の前に駐車場があり、ちょっと隠れ家的な雰囲気もあります。
資金面は、『朝日町まちなか起業応援事業』の補助金制度に申請しました。
制度ができてからまだ前例がないらしいのですが、「まちなかの立地」「空き家を活用すること」「地域のコミュニティスペースをつくるという目的」などの条件が該当しました。
資金面のリスクを考えると、なかなか踏み切れないので、こうした補助は有難いです。
それでも、なるべく費用を抑えるために壁の塗装や床の張替え等、できるところは自分でやりますが、手伝ってくれる仲間もいてすごく有難いです。

 

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—どんなお店になりそうですか?

店名の『HYGGE(ヒュッゲ)』はデンマーク語で、大切な人と過ごす居心地のいい空間や時間という意味があります。
雰囲気は、カフェというよりは喫茶店。
商店街にきた人がうちに寄ったり、うちにきた人が商店街に寄ったり、ふらっと入ってもらえるお店にしたいと思っています。
メニューで考えているのは、畑で育てているハーブを使ったハーブティーやスイーツ、果樹園から直接仕入れる桃やぶどうで作るジャム、旬でなるべく地元の素材を使ったキッシュなど。
ただ、お店のスタイルにしろ、メニューにしろ、実際にやってみないと分からない部分が多いです。
はじめから“決め決め”にせず、やりながら少しずつ作っていけたらと思います。
そうして、いつか、まちの風景のひとつになれたら・・・。
オープンは7月下旬の予定です。

 

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—富山へ移住を考えている方にアドバイスがあればお願いします。

私の場合、祖父母の家があり、近くに親戚もいて、最初は戸惑いがありましたが、支えてもらった部分も大きいです。
だから、そうでない方が移住するのは、もっと大変だと思います。
家を探して、地域にもとけこんでいかなければならない。
でも、そういう大変さをプラスに変えて考えられれば、いくらでも可能性が広がりますし、実際、朝日町にはそういう心強い仲間が多いですよ。
地域の人と交流したい、つながりを作りたい。
そうした方たちにも、『HYGGE』を利用していただければと思っています。