大学時代に初めて登った立山の魅力に惹きつけられ、現在は、立山をメインフィールドにツアー企画やトレッキングガイドをしている大塚憲一さん。
どこに住むか、どんな職業に就くかよりも、自分が納得できる生き方を見出すことに重きを置いています。自分と向き合い続けてきた結果辿り着いた「富山暮らし」を、まっすぐな言葉でお話ししてくださいました。

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小さい頃から自然のなかで過ごすことが大好きだったそう

 

東京よりも便利な、富山暮らし

昨今、加熱している地方移住ブーム。大塚さんは、地方に移住者を増やそうという政策ありきの世の中の動きに、少々違和感を抱いているといいます。

「多くの人が描いている“地方移住”は、『都会での仕事を捨てて、自然にシフトしながらのんびり働くこと』『都会の便利さはないけど、つつましく豊かな暮らし』というもの。でも実際は、それに当てはまらない様々なライフスタイルが存在します。“地方移住”や“田舎暮らし”という言葉でひとくくりにするのは安易かなと思うんです」

大塚さんが住んでいるのは、富山駅から路面電車で約15分ほどの住宅街。最寄り駅周辺にはスーパーやドラックストアが多数あり、少し足を伸ばせば、肉屋や八百屋が建ちならぶ昔ながらの商店街もあります。移住希望者がついつい考えてしまう「都会志向」か「地方志向」かという2つの形。大塚さんはそのどちらかに絞る必要はないと言います。

「僕は富山市という“地方都市”で暮らしながら、仕事場は立山という壮大な自然のなか。自然と都会との程よいバランスが心地良いです。東京時代よりも便利な暮らしかもしれません」

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行きつけの酒屋さんに案内してくださいました

 

たまたま見つけて潜り込んだ富山で…

幼い頃は、本籍のある長野県にて夏休みを過ごしていました。その頃に感じたゆったりとした時間の流れが忘れられず、親元を離れ地方の大学に進学することを決めます。
地学が好きだったことと入試システムが自分に合っていたという理由で、富山大学地球科学科へ入学。3年の実習時に初めて登った立山に感動し、雪氷学の研究室に所属します。そこから大学院修了までの約3年間、ほぼ毎週立山に登る生活を送っていました。

「登山が好きというよりも、非日常の世界に浸れる“山の時間”に惹かれました。立山には不思議な力があるんです。登山ガイドとして毎日登山しても、新鮮な気持ちでいられます。毎回、お客さんよりも感動していると思います(笑)」

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着地型ツアーと出会い、動き出した起業への道

24歳の時、“30歳で起業”という目標を掲げます。
「大学院修了の際、起業のノウハウを身につけようと就職活動をしたのですが、気持ちにブレがあり上手くいきませんでした。そこで、起業までの5年間は1年ごとに区切りをつけながら、興味をもったことに全力で取り組もうと決めました」。立山の山小屋スタッフや東京でのツアーコンダクター、テレフォンアポイントの仕事など、場所や職種にこだわることなく様々なことに挑戦。周囲からは心配する声もありましたが、奥さまと海外を旅しているとき、大塚さんの人生を動かす「着地型ツアー」に出会います。

「地元の人がその土地ならではの楽しみ方を教えてくれる「着地型ツアー」。そのおもてなしスタイルにとても魅力を感じました。当時、日本で主流だったのは“団体ツアー”で、旅行会社の人対大勢のお客さんというスタイルでした。同じ目線で同じ方向を向きながら案内し、お客さんとの距離がグッと近い着地型ツアーのスタイルを日本でも広めたいと考えるようになりました」

奥さまが富山県出身で、移住に積極的だったこともあり、2010年、富山にて会社を立ち上げることになりました。有言実行、30歳での起業でした。それから6年、まだまだ不安定な面もありますが旅行業登録もし、少しずつ活躍の場を広げていっています。

「申し込んでくれたお客さん一人ひとりに心の底から喜んでもらえる時間を提供することを心掛け、その積み重ねで仕事の幅が広がっていけばいいなと思っています。立山の案内についても、登山ガイドとして山に登頂してもらうことを目的にするのではなく、“その日一番の立山”を感じてもらえるような案内をしたいという思いが強いです」

インタビューを終えて…

インタビュー中、「僕が移住者インタビューに出て大丈夫ですか?移住に強い思いがあるわけじゃないから…(笑)」と何度も心配していらっしゃった大塚さん。“移住”を目的としているわけではなく、どうやって自分の人生を歩んでいくか正直に向き合ってきたことが、結果として富山暮らしにつながっている大塚さんの姿を見て、永くその土地を愛し続けてくれる人は、大塚さんのような人であり、そういう人がいるからこそ未来がつながっていくのだろうと、移住の本当の意味を改めて考える貴重な時間となりました。

▷株式会社トラバースホームページ Travearth


大塚さんのお気に入り

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大塚さんが、立山の山小屋生活中に感じたことを綴ったフォトポエム

 

旅の写真2枚と砂漠の砂・砂漠の薔薇

世界一周の旅をしていた時の写真。器に入っている砂はモロッコのサハラ砂漠から持ち帰ってきたもの、真ん中のものは砂漠の薔薇と呼ばれる現地で購入した砂の化石

 

人力車の写真と木札

浅草で人力車をしていた時の思い出(写真のお子さんは一番上のお姉ちゃん!)

 

登山靴

登山ガイドの際に愛用している、スポルティバの登山靴

 

ツアーちらしとアルミボトル

おととしから春限定で実施している富山の水の恵みを源までたどるツアー「雪の大谷が語る水と氷の物語」のちらしと

参加者にプレゼントするオリジナルアルミボトル

 

4姉妹の写真

昨年夏に娘が生まれまさかの4姉妹に!!(8歳、5歳、2歳、0歳)

※背景は立山周辺の登山地図です

 

 大塚さんの暮らしの楽しみ

家から徒歩3分ほどのところにある酒屋さん。地元のお酒が豊富に揃っているだけでなく、様々なお酒を試飲させてくれるので、県外出身の大塚さんにとってありがたいお店です。「週に1回は訪ねるお気に入りの場所。料理上手のお母さんが、お酒に合うお惣菜やおつまみを教えてくれるので、ついつい長居しちゃうことも…ほろ酔い気分で家に帰ります(笑)」DSC_8468