北アルプスの名峰・剱岳(つるぎだけ)のふもと、富山県上市(かみいち)町出身の陶芸家・野村瑞穂さんは、進学、就職で県外へ。
約10年ぶりに富山へUターンしてからは、剱岳を仰ぐ田園風景のなかに工房を構え、故郷の四季の豊かさを感じながら創作活動を続けています。

 

05野村 瑞穂さん

 

—富山県へUターンするまでのいきさつを聞かせてください。

幼少のころから、手で粘土をこねたりするような、モノづくりが好きでした。
大学は芸大に進み、陶磁器を専攻。院にも進んで6年間、京都で過ごしました。
卒業後は、岡山県の『倉敷アイビースクエア』(旧紡績工場を改装したホテル)内の陶芸教室に約3年半勤務しました。
富山へUターンしたきっかけは、祖母が病気になり、両親を手伝おうと、帰省したとき。
地鉄(富山地方鉄道)の電車に揺られ、上市方面に向かう途中、車窓から見えた剱岳が夕焼けに染まった光景がすごくきれいで、心が動きました。
そのとき、地元に帰ろうと決めました。

 

—お仕事について聞かせてください。

富山にUターンしてからは、上市町の実家の近くに工房を構えました。
以前のように、どこかに就職して陶芸を続ける方法もありましたが、一人で制作に打ち込める環境に変えたいと思い、厳しくても、あえて独立して工房を持つことにしました。
今は週3回の陶芸教室のかたわら、オブジェや器など創作活動を続けています。
Uターンした当時、富山は都会と比べ、情報があまり入って来ず、展示会など作品を発表できる場も少なかったです。
今は、インターネットや交通網の発達で、以前ほど都会との差が無くなってきたように思います。
また、県内は人口の割に美術館やギャラリーの数が多く、私自身も年2〜4回、個展やグループ展を開いています。

 

—野村さんの作品について聞かせてください。

作品で多いのは、手びねりで作るオブジェです。
長年、人体のラインをモチーフにし、土の温かみとともに、命の温かみも表現したいと思い、作ってきました。
形そのものの面白さを追求しつつ、そこに土のもつ温かな質感をどう表現していくか、いろいろ試作を重ねています。
また、オブジェでも器でも、こうありたいと思っているのは、シンプルで、ほんの少しのユーモアがあることです。
見る人の心が「ほっ」とゆるむような作品づくりを続けていけたらと思っています。

 

05野村 瑞穂さん03

 

—とやま暮らしについて聞かせてください

今は主人と子どもと3人家族です。
両親も近くに住んでおり、いつでも顔を出せるので安心です。
まわりは田園が広がっていて、のどかな風景を見ると、心が落ち着きます。
また、暮らしの中でいつも身近に感じる剱岳は、四季の変化、天候の変化により、さまざまな表情を見せてくれます。
ゴツゴツとした岩肌の夏、まっしろに雪化粧する冬、あるときは厳しく怖ろしく、またあるときは優しく幻想的。
旅行などで県外へ出かけても、剱岳が見えると、「ああ、帰ってきたな」と思います。
そんな環境で生活し、制作活動ができることに、このごろ改めて幸せを感じています。

▶︎陶工房・野村ホームページ