大学進学を機に高岡市に移住した西田芽以さん。大学院まで進み、卒業後は「まちづくり」の会社で様々な事業をしています。

そんな西田さんが中心となってDIYでつくりあげたお店「小さなキッチン&雑貨 Lupe」が2017年4月、射水市内川にオープンしました。

まちに寄り添い、まちの魅力を伝える拠点となっています。

ゆるゆると定住していった感じ

奈良県出身の西田さんは18歳のとき、木工がしたいという思いを胸に高岡市にある富山大学芸術文化学部に進学しました。

家具やスプーン、お箸などの制作活動をしながら、ものづくりのサークルに入り、高岡の職人さんたちと交流を深めていき、学部卒業後はそのまま大学院へ。

「ものづくりの現場のそばにいたい、ものづくりを通して知り合った職人さんとのつながりを残したい、ということで高岡に残ることを決めました。だんだんまちに馴染んで、ゆるゆると定住していった感じです」。

高岡市金屋町 新旧の工房が立ち並ぶ町並み

「まちづくり」を仕事に

大学在学中、「ものづくり」をしていく中で、目に見えない「コトづくり」「まちづくり」に興味を持ち始めました。

大学院1年生の夏、「日本仕事百貨」というサイトでまちづくりの会社「株式会社地域交流センター企画」が運営する「カフェuchikawa六角堂」の求人を見つけます。男性限定の募集でしたが、とりあえずやってみようと応募。話を聞いてくれたオーナーは会社の事務職でなら、ということで採用してくれました。アルバイトとして週1回、富山市に通います。

「高岡だけ知るよりも、他の地域のことももっと知りたいというのがあったので、高岡市以外で仕事を探していました。ひとつのまちだけすごく好きというのが嫌だったんです。

ここでは、まちづくりに関わりながら、ずっとやってきたものづくりも生かせるということで就職を決めました」。

2年間のアルバイト期間を経て、大学院卒業と同時に正社員として同社に入社しました。

株式会社地域交流センター企画の現事務所がある射水市内川

「小さなキッチン&雑貨 Lupe」の制作

入社後、オーナーから「自分たちの手でできる範囲で小さなお店を作ってみよう」とお店のDIYの事業を任されました。

場所は、カフェuchikawa六角堂の物置として長年使われてきた建物。

「オーナーからしてみれば、DIYでどこまでできるのかという実験でもあったみたいです」。

Lupe=虫眼鏡をのぞいて探検したくなるような小さな空間にはたくさんの魅力が詰まっている

ゾウ店長がお出迎え

制作にあたって、ワークショップのイベントを立ち上げ、知り合いやイベント参加者と一緒に大掛かりな作業をこなしました。

「解体、土間流し、壁板張り、壁塗り…全部で7回ぐらいワークショップをやりました。6坪ほどの小さな空間ですが、いろんな人の手を借りています。ワークショップに来てくれた方とは今もつながりがあり、「Lupe」のお客さんとして遊びに来てくれたり、古民家のリノベーション作業のときに声をかけて手伝ってもらうことも。この活動を通してまた知り合いが増えました」。

店内の黒板にはクラウドファンディングで出資してくれた方とワークショップに参加してくれた方の名前が

「Lupe」は、カフェuchikawa六角堂の姉妹店としてパンの販売をしたり、地元の作家さんの作品や富山県内こだわりの食品などを取り扱う地域密着型のお店です。

「近所の人がどれだけ来てくれるのか心配していましたが、いざオープンしてみると常連さんになってくれたり、様子をのぞきに来てくれたりして安心しました。いつも決まったパンを買っていってくれる近所のお母さんもいます」。

壁に描かれた内川の周辺マップ。お客さんにお勧めスポットを付箋で張ってもらっている

「お店に合うと思うから」と近所のお母さんがLupeに置いていってくれたお手製のランプ

小さなキッチン&雑貨 Lupe Facebookページ

個人と個人のつながりから「まちづくり」は発展していく

「まちづくり」とは何なのでしょう?そんな漠然とした質問を西田さんに投げかけてみました。

「まちづくりって、ハコモノ(※)とかもよく言われますが、そういうのには興味がなくて。大きな目を持つことも必要だと思いますが、もっと小さなことに目を向けて、身近な人とのつながりを大事にしてまちづくりというものに取り組んでいきたいと思っています。地域の人とちゃんと話したり、空き家の問題にしても、きちんと家主さんと話して個々に解決していくような気持ちで」。

※国や自治体によって建てられる公共施設のこと。ハード面でのまちづくりを考えるときに使われる言葉。

この会社でなら色々できる 今後の展望について

現在の仕事は、古民家のリノベーション事業やDIYのワークショップといった木工の経験が生かせるものから、カフェuchikawa六角堂の繁忙期スタッフ、「氷見市IJU(移住)応援センター『みらいエンジン』」(氷見市の移住・定住相談窓口)の相談員など多岐に渡ります。

プライベートでは、高岡の知り合いの工房の一部を間借りしているそう。

「今も木工やりたいというのはあって、手作業でできる小物など作りたいなと。機械さえ手に入れば家具も…もう少し時間に余裕ができればやりたいと思っています」。

「手作り感満載ですが…」と謙虚。とても素敵なLupeのキッチンです

やはりものづくりの血が流れている西田さん。いずれ自分の木工作品をまちづくりの拠点づくりに生かしたいという思いを聞かせてくれました。

「この会社では様々なことができると感じています。家具も作ったら使ってもらえそう。『工房を持ったら家具なんかも作れますよ』とオーナーを口説いて、自分の工房を持つという野望はあります(笑)」。

地域との関わり方の秘訣は「がんばりすぎない」

西田さんは強い芯を持ちながらどこかゆったりした雰囲気。

最後に、西田さんならではの地域との関わり方の秘訣を聞いてみました。

「地域の人にはまず普通のあいさつをするところから入って、ゆるゆると近づいていきます。最初からいきなり『○○から来た□□です!よろしくお願いします!』ってがんばりすぎちゃうとなんか変なので。チャンスをうかがって仲良くなっていく感じですね」。

ご近所づきあいでは、いい意味でも悪い意味でも人との距離が近いことを感じるそう。

「おばあちゃんと立ち話していて、話長いな~とかもありました(笑)。話が広まるのも早いですね。何でそれ知ってるの?!ということも多々。でもそういうのも楽しみながら暮らしています」。


西田さんのお気に入り

「住まいの解剖図鑑」

住宅設計の工夫などをわかりやすく解説した本。図説で読みやすく、木工だけでなく建築のほうにも興味がわいてきたという一冊。

「秘密基地の作り方」

建築家の著者が秘密基地作りのノウハウをまとめた本。ゆる~いイラストがツボ。

やたら動くおもちゃ

アメリカに住んでいた従兄弟のところに遊びに行ったとき、美術館で見つけたもの。ネジを巻くと不規則な動きで飛び回る。誰が何をモチーフに作ったのかもわからないが、やたらと動く姿が「きもかわいい」とお気に入り。

子供用カトラリー

西田さんが学生時代デザインし、高岡の職人さんに形にしてもらった作品。漆塗りだけどカラフルでポップなデザインがおしゃれ。お子さんの成長に合わせて3段階使えるようになっている。

Lupe柄のとんぼ玉ペンダント

内川に工房を構えるとんぼ玉作家の齊藤悠子さんが「Lupe」オープンに合わせてサプライズでプレゼントしてくれたもの。今ではお店に立つとき、制服として身に付けている。

移住のアドバイス

定住できるかどうかは、環境や仕事のこともありますが、知り合いがいるかどうかが大きいかなと思います。いれば色々相談できますし。いろんなところに行ってみるというのと、近所の人に恐れずあいさつするのが重要かなと思います。

学生のころはよくイベントに行ったりして知り合いを作ろうとしていました。

だから結構社交性はいるのかも…田舎だからこそのコミュニケーション能力がいるのかな。

頼れる人さえいれば、住む環境や仕事の問題も、相談できればなにか解決策は見つかると思います。