400年以上の伝統を持つ城端絹織物のシンボル、『じょうはな織館』の新スタッフとして2015年5月から加わった仁保 文佳さんは、群馬で生まれ、大学進学で東京へ。
美大を卒業後、ハウスメーカーに就職し、インテリアコーディネーターとして働いていましたが、織物の魅力にひかれ、会社を退職。
京都の学校で、織物を一から学ぶことに。
そしてこの春、住んでいた大阪を離れ、職場のある南砺市へ。
「手織りの魅力を一人でも多くの方に伝えたい」という仁保さんにお話を伺いました。

 

12仁保 文佳さん

 

—織物に興味を持ったきっかけを聞かせてください。

インテリアコーディネーターをしていた頃、いろんな商材を扱う中のひとつにカーテンがあり、生地を見たり、触れたりするのが好きでした。
段々と「生地についてもっと勉強したい」「商品を提案するだけでなく自分でモノづくりがしたい」と思うようになり、そんな時、知人から京都にある織物の学校の話を聞いたのがきっかけです。
私が行っていた『川島テキスタイルスクール』は、南砺市 (旧・城端町)出身の川島甚兵衛という人が創業した京都の老舗『川島織物』(現・川島織物セルコン)が運営する学校です。
ここで二年間、織物のことを基礎から学びました。
実をいうと、最初は生地をデザインすることに興味がありましたが、学んでいくうちに手織り作業そのものの魅力に引き込まれていきました。

 

—手織りの魅力を聞かせてください。

手織りのモノは工業化製品とは違い、風合いが美しく、ひとつひとつ違う織物ができます。
作り手として織り機に向かっていると、心が落ち着き、時間が経つのを忘れて夢中になってしまいます。
糸繰り、整経、筬通しなど、完成までの長い道のりをひとつひとつ自分の手仕事で積み上げていくプロセスは感動的です。

 

12仁保 文佳さん02

 

—富山に移るまでのいきさつを聞かせてください。

手織りができる環境にしぼって就職先を探していたところ、以前『じょうはな織館』で働いていた同級生から城端行きを勧められました。
富山は、それまで一度も行ったことがなく、知識もほとんどない土地。
それでも、「手織りの仕事ができるなら」と思い、決めました。
雪の多い地域に住むのは初めてなので、母は少し心配していましたが、「がんばりなさい」と送りだしてくれました。
祖母は「富山には行ったことがないから、遊びに行くわな」と、私以上にノリノリでした(笑)。

 

—『じょうはな織館』ではどんなお仕事を?

織館にはギャラリーやオリジナル手織りグッズを販売するショップ・喫茶の他に、体験スペース兼工房もあり、卓上機や高機(足踏み式手織り機)を使ってコースターやタペストリーなどの手織り体験ができます。
この体験の指導とオリジナル手織りグッズの製作を担当しています。
体験の指導をしていて最も難しいと思うのは、小さなお子さんや初心者の方にもわかりやすく説明すること。
つい専門用語が多くなったり、手を貸してしまったりして、後で反省します。
うれしいのは、体験したお客様の笑顔。
自作のコースターやお守りを大事そうに持ち帰られる姿を見ると、こちらもうれしくなります。
また、グッズ製作では、自分が製作したものが、下のショップに初めて並んだのを見た時に感動しました。
アイテム数はまだ少ないですが、これから少しずつ増やしていけたらと思っています。

 

—富山暮らしの感想を聞かせてください。

城端の町については、「越中の小京都」と呼ばれる古い町並みや伝統ある曳山祭りを見ると、京都に似た心地よさを感じます。
住民の方のアットホームな雰囲気も気に入っています。
車は持っていないので、移動は主に公共交通です。
通勤にも利用する城端線は、1時間に一本か二本しか電車がないので、時間に余裕を持って行動するようになりました。
車窓に映る田園風景や南砺の山々を見ると、気持ちが癒されます。
高岡方面、金沢方面のどちらにも出やすく、北陸新幹線の新高岡駅にも接続するので、アクセスはわりと良いです。

 

—オフの日はどんな風に過ごしますか?

富山を知るため、あちこち探検しています。
先日は、五箇山(ごかやま)に行って、世界遺産の合掌造り集落を見学し、手漉き和紙も体験してきました。
まだ他にも立山ジップラインや黒部峡谷のトロッコ電車など、行ってみたいところがたくさんあります。
ちょっとずつ開拓し、家族や友達を案内できるようになりたいです。

 

—今後の目標はありますか?

今はまだ、先輩に言われたことをこなすだけで精一杯ですが、自分で新しいグッズを考えて提案できるようになりたいです。
せっかく織れる環境にきたので、ちゃんと勉強して、自分の財産にしていきたいです。
将来的には、織物作家として活動できるようになりたいです。

 

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