氷見市指崎(さっさき)に家を借りて養蜂業を営み、自宅のある横浜の保土ヶ谷駅前に店舗を購入してハチミツ店を開業した、二地域居住の松田さんをご紹介します。

 

18松田健司さん

 

松田さんの名刺に書かれたメールアドレスは「namakemono@×××」。
「寡黙で動くのがきらいです」。
わざわざ仕事の途中に「くらしたい国、富山」の事務局に立ち寄り、一時間私たちに語ってくださった最後の言葉です。
当然ジョークと理解させていただきます。

 

北海道に生まれ東京で育ち、広告会社から富山の民放局で勤務していた松田さんは、平成18年の「とやま帰農塾」の氷見八代塾に参加しました。
数年前から養蜂に興味、それも「定地養蜂」(花を求めて全国を移動するのではなく一箇所に定住して蜜を集める)ができる場所を探していたところ、氷見八代の山間部の胡桃・国見周辺のロケーションがすっかり気に入りました。
そこで、放送局を退職した昨年、近くの針木地区に空き家を借りて養蜂を始めました。
なお、帰農塾や集落でお世話になった方々にもハチミツ作りを勧めていますが、なかなか乗ってきてもらえません。

ハチミツ作りは4月から10月まで。
ミツバチが集めたハチミツを搾ってそのままビン詰め。
無添加、無加熱の酵素が生きている生蜜です。
「ハチミツは糖度が平均80%と高いし、含まれるプロポリスなど抗菌効果もあるので腐敗しない」のです。
「この前、山に入って怪我をしましたが傷口にハチミツを塗ってテープで押さえて治しました。
医者に行けば何針も縫われて傷口も残ったでしょう」ときれいに治っている傷の跡を見せていただきました。
ハチミツにはそういう効能もあるそうです。

 

JR保土ヶ谷駅前のマンション一階で、7月8日にハチミツ店「花みつ」をオープンしました。
蜜蜂たちが作ったハチミツをお店で販売します。
養蜂がお休みの冬の期間は松田さんが、氷見で養蜂をしている間は奥さんが店番です。

 

18松田健司さん02

 

ここで、松田さんから移住を考えている人へのアドバイス。

「実は、この春から今の場所に引っ越したのです。
前の家で家賃のことでもめたのが原因。
借りる時に正式の契約書を取り交わそうとしたら『いいちゃ いいちゃ(必要ありませんの富山弁)』といわれ口約束をしていたのですが、それが失敗のもと。
田舎では、契約書のような堅いことは嫌われるかもしれませんが、後々のため、しっかり書類を交わしましょう」。

「定年後に移住する場合は、しっかりとした目標を設定することが大事です。
『なんとなくあこがれの田舎暮らしをしよう』では続きません。
元気に働ける時間とお金には限りが有りますので、体とフトコロに無理をしないで続けることが出来る養蜂を選びました、アカシアの花の中でみつばちの羽音と蜜の香りに包まれて働くのは至福のひと時です」。

 

今の家は、縫製工場だった建物の一部。
前の家が「広すぎて不便だった」ので、今回は三棟ある家の2間と台所部分を借りています。
「風呂のボイラーが壊れていてシャワーしか使えませんが、目の前に温泉があるので困りません」とのこと。

二地域居住の「良いとこ取り」のような生活。
県内の養蜂家とのネットワークもしっかりできました。
あとはお店の繁盛を祈るばかりです。