山口県岩国市出身の石本泉さんは、東京の武蔵野美術大学で工芸工業デザイン科で木工を専攻。
卒業後、南砺市の「五箇山和紙の里」に勤務し、今年で6年目になります。
2013年3月、デザインユニット「minna」とコラボレーションし、新しい和紙製品のブランド「FIVE」を立ち上げました。
和紙製品には珍しいビビットなカラー展開、魅力的なデザインで注目が集まっています。

 

23石本 泉さん

 

—「五箇山和紙の里」就職のいきさつは?

在籍していた大学が五箇山と交流がありました。
無名舎と言う大学の寮が五箇山にあり、夏にそこを利用して訪れたのが最初です。
それまで五箇山のことを知らず、富山県と聞いてもピンときませんでした。

五箇山へ向かう国道156号線を進むと、途中、民家が全く見えなくなりますよね。
山と川だけの景色が続き、もう誰も住んでいないだろうと思ったら少しずつ集落が見えてきて、こんなところにまだ住んでいる人がいるんだ!と驚きました。
初めての五箇山は、環境、人、生活、文化…何もかもが知らないことだらけ。
すごいものがあると思いました。もともと旅が好きで、秘境的なものに憧れがありました。
大学で専攻していた木工も好きですが、紙の素材が面白いと思いました。
また、五箇山和紙の里で働いていた大学の先輩の話を聞いて、和紙の仕事に魅力を感じました。

 

—和紙の里での仕事は?

和紙作り体験の指導や、手漉きや機械漉きの商品作り、原料の処理、タペストリーの絵付けなど多岐にわたります。
FIVE以外の既存の商品のパッケージを変えたり、カラー展開を絞ったりなども行っています。
また、和紙の原料・コウゾを畑で育てています。
自分たちで作っている原料を使った製品をもっと作りたいです。

 

—和紙製品の新ブランド「FIVE」誕生について

1年前に、五箇山和紙の里で新商品を作る事業が立ち上がりました。
和紙の里だけで作るには限界があると思い、東京で活躍している同級生のデザインユニット「minna」の2人に相談しました。
彼らも面白いと協力してくれることになり、電話やメールでやりとりしながら試作を作りました。
昨年9月に五箇山に来た彼らに地域の案内をしたり、コウゾの畑を見せると、環境の素晴らしさに感動していました。
そして、職員たちと話し合い、ブランドの方向性が決まりました。

展示会では反響が大きかったです。
五箇山も五箇山の和紙も、知っている人はほとんどいないので、商品はもちろん、五箇山の環境などから説明するのが楽しくて、やりがいを感じました。
取引先は少しずつ出来てきました。
今までは店内のみで売るスタンスでしたが、これからは待っていてはだめ。
外に向けて発信し、FIVEをきっかけに五箇山を知ってもらえたらいいと思いました。

 

23石本 泉さん02

 

—富山の暮らしはいかがですか?

初めの2年半は、国道沿いの市営住宅に住んでいました。
冬場、雪は多いですが、国道は除雪が行き届いているので、思ったより苦労はしませんでした。
その後、空き家に引っ越しましたが、そこは家まで約50mの道のりを自分で除雪をしなければいけなくなりました。
冬は除雪に振り回されます。1日休むと家に入れない状態になります。

食べ物がとても美味しいです。
岩魚やウナギ、クマなどのジビエや山菜など東京で食べられないものが身近にあります。
水も美味しいですね。雪解けの水が豊富にあります。
また、四季の変化に富んでいて、毎日見ていて飽きません。
東京出張などから帰ってくるとほっとします。とても居心地がいいですね。

この地域は行事がたくさんあります。先日も春祭りが2週間ありました。
地域の青年団に入って、地元の若い人たちと交流しています。昨年秋からは消防団にも入りました。
行事からコミュニケーションが生まれて楽しいです。
東京では地域交流がなかったので、五箇山に来て一気に生活が変わりました。
やることがたくさんあって、スローライフではないですね。

 

—お休みはどのように過ごされますか?

実は休みの日も職場に来ていることがあります。
以前は他県に旅行することもありましたが、最近は山から下りていません。
五箇山に来てからスノーボードを始めました。五箇山は、ぼーっとするのも気持ちのいい場所です。
でも、ずっと五箇山にいると感覚が鈍るので、外の世界も見て、五箇山を客観的に見ることも大切ですね。

 

—将来の目標は?

若い人は和紙に関心が薄いですが、それを変えたいです。
特に地元の若い人に和紙を使ってもらって、その良さを誇りに持って、外に発信してもらいたい。
地域の子供たちも和紙作り体験に来ますが、特別なものだと思っている子は少ないです。
もっと興味を持ってもらえる存在になったらいいですね。
FIVE以外にも和紙を使った新商品に挑戦したいです。
和紙は軽くて丈夫、自然の素材でストレスがありません。手にも違和感なくなじみます。
合掌造りにも障子紙が使われています。光の取り入れ方や空間の使い方に魅力を感じます。
現代は日本ならではの文化や美意識が消えつつあります。
もしそのものがなくなったとしても、違うもので表現し、日本人としての感覚は無くしたくないと思います。
五箇山の文化を残していきたいですね。
市内の他地域の文化も見ていきたいし、つながりを持っていきたいと思います。

 

▶︎FIVE