ケーブルテレビのキャスター、また、ライターとして滑川市や上市町の魅力を伝え続けている古野知晴さん。「滑川市や上市町の魅力、富山県の魅力をもっと伝えていきたい」と活動されています。
Uターンのきっかけは?
大学進学を機に東京へ行きましたが、富山県でののんびりとした暮らしとのギャップを感じてなかなか馴染むことができませんでした。富山にいた頃は、立山連峰に囲まれていることが「閉鎖的で外の人を受け入れない雰囲気を作っている」と思っていましたが、離れてみて、それを「守られていたんだ」 と感じるように。外に出たことで富山県の良さが分かり、やはり自分が暮らしていきたいのは故郷だと気付きました。
また、スクールカウンセラーになりたかったのですが、相談される方の様々な事情を自分が抱え込めるのかと不安になり、いろいろ考えた結果、大学を中退して富山に戻ってきました。
地域の魅力を伝えるおもしろさ
Uターン後も人を支えることを学びたいと思い、保育園で働きながら、大阪の通信制短期大学に入学しました。
そのとき同僚の娘さんが砺波市の「プリンセスチューリップ」として活動されていました。私も勧められて応募したところ、採用され、砺波市のPR活動に1年間関わりました。本当は人前に出るのは苦手でしたが、活動を通して少しずつ克服し、その一方で地域について調べ、その魅力をPRする楽しさに触れました。
その後、ケーブルテレビに入社し、初めて取材を経験しました。そして、「Net3(滑川市、立山町、上市町をエリアとするケーブルテレビ)」へ配属。さらに地域に密着した取材が始まりました。
ホタルイカ観光船や雪の大谷など、取材で初めて訪れた場所がたくさんありました。ホタルイカの青い光は、生で見るとものすごく綺麗で感動しました。また、立山町芦峅寺(あしくらじ)の布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)は、カメラ愛好家の方が報道陣に負けじと場所取りをするなど、大勢の人が集まります。映像で見るのと、その場へ行き自分で体験するのとでは臨場感が全く違います。地域の伝統文化や歴史に触れることは、人生を豊かにする上で大事なことだと感じました。
滑川市・立山町・上市町の様々な場所へ取材に行った経験が、私に大きな影響を与えています。
地元の方はあまり県内の観光地に行っていないような気がします。「いつでも行ける」「高いお金を出してまでは行かない」という声をよく耳にしますが、それは本当の魅力を知らないからだと思います。知ることによってさらに興味が湧き、地元への愛着が深まるため、地元の方が気付いていない魅力を伝えていくのは大切なことだと思うようになりました。
「はたらくらすコネクションin上市」始動
第2子の出産を機にケーブルテレビを退職。子育てと仕事の両立を考えていく中で、起業を視野に入れ始めました。その後、滑川市の番組のキャスターとして採用され、再び地元の魅力を伝えるように。上市町雇用創造協議会主催の「女性のためのプチ起業塾 1期」に参加したのが縁で、上市町が企業や店舗を紹介するホームページを作るという話を聞き、事業を請け負うことになった(株)プロジェクトデザインへ入社しました。
「はたらくらすコネクションin上市」は冊子にもなり、3冊を発行。現在、企業・店舗96社、移住者18組に取材しました。
地元企業ひとつひとつの魅力を古野さんの視点で丁寧に紹介
上市町には大きな企業がいくつもありますが、自社HPがなくあまり発信されていない企業や店舗もできるだけ紹介したいと思っています。いいお店や会社がたくさんあるのに、発信していないだけ。この冊子を通してたくさんの方に知ってもらいたいです。
「はたらくらすコネクションin上市」は全戸配布されているので、3年目の今では少しずつ町内に浸透してきました。「これを見て行ってきたよ」と言ってもらえたり、掲載している方同士がつながるきっかけにしていると聞いたりすると本当にうれしいです。
今でも取材のアポ取りでOKをもらうまで大変ですが、取材先の方に仕上がりを喜んでもらえると「やっていて良かった」と思います。表紙の皆さんの笑顔は私が撮影しています。「笑顔が良いね」と言われると、「やった!」と喜んでいます。
上市町の魅力は「人が熱い」
取材を通して感じていることは、「熱い人が多い」ということ。「地域のためになんとかしたい」という熱意を持って頑張っている方がたくさんいらっしゃいます。例えば、朝通る車1台1台に挨拶をするガソリンスタンドの社長。挨拶された人がほっこりしてその人の職場や家庭で明るく接することができれば、その周りの人や地域も明るくなるという信念を持っておられます。他にも社員一人ひとりを幸せにしたいというスローガンを掲げている会社や、会いに行きたくなる楽しい店づくりのために工夫しているコンビニエンスストアなど。「自分のところにお客さんを呼ぼう」「自分のところの業績だけが上がればいい」という考えではなく、「地域を明るくするためには何をすればよいか」と考えていらっしゃる方が本当に多いです。話を聞くとファンになってしまいます。それぞれ地域のために頑張っていらっしゃるから応援したいし、たくさんの方に知ってもらいたいです。
一昨年取材したお店がご事情で閉店しました。しかし、「はたらくらすコネクションin上市」で紹介したことで、「こんなお店があった」「こんな風に頑張っている人がいたんだ」と知らせることができます。富山県では「いいところなんてないちゃ」と謙遜して言う方が多いですが、「こんなに頑張っている人がいるから素敵でしょ」と言えるきっかけになればと思います。
今後の目標
「はたらくらすコネクションin上市」では、地元の企業や店舗の情報、県外から移住された方の声を伝えることで、移住・定住を含めて交流人口を増やしたいと考えています。いずれは、上市町だけでなく、富山県の魅力を掘り起こしていきたいです。地元の良さ、上市町の魅力、富山県内の魅力を伝えて「知る」機会を増やしていきたいですね。
古野さんのお気に入り
カメラ
取材の相棒。上市町の方々の素敵な笑顔を収めてきました
取材ノート
ケーブルテレビ時代のものを合わせると10冊以上。1ページごとに取材された方の声がこと細かに記されています。
はたらくらすコネクションin上市
上市町の魅力が詰まった冊子。これを読めば上市町に行きたくなります。
移住のアドバイス
富山県内でも、市町村ごとにそれぞれ特色があり、魅力が違います。
海の近く、山の近くなど、好みに合わせて、どこに住んでも“自分らしい”暮らしができると思います。
最初は地域に入りにくいかもしれませんが、入ってしまうと意外と親身になってくれます。「人のために何かしてあげたい」という方が多いです。玄関先に野菜がおいてあることも…。心を開けば周りは温かく迎えてくれます。
また、子育てしやすい環境です。公園は広く、駐車場もあり、子どもを遊ばせやすいです。治安も良いので安心して遊べる環境があちこちにあります。