富山の人たちに支えられてできるパン作り

豊田 安江 さん(とよだ・やすこ)

出身地:大阪府
現住所:射水市 移住年:2016年
職業:食パン専門店5(ファイブ) 店主
▶︎食パン専門店5Facebookページ

衝撃を受ける食パンに出会い、パン職人という新たな世界に飛び込んだ豊田安江さん。ご両親の故郷である富山県で食パン専門店「5(ファイブ)」を開業しました。「周りの方々が支えてくれているおかげです」と温かな笑顔でお話してくださいました。

人生を変えた食パンとの出会い

大阪府に生まれ、宝塚で育ち、神戸市へ。事務職をしていましたが、ずっとパン作りには興味がありました。自分で作ってみましたが、どんなに良い小麦粉、良い素材を使っても、家庭ではなかなか思うようなパンは作ることができませんでした。毎週作っては捨てるの繰り返しでした。
40歳のときに、神戸市の「春夏秋冬」の食パンに出会い、衝撃を受けました。今までに食べたこともない食パンで、生のままで食べるとふわっと消えてなくなる口どけの良さ、焼くと表面はパリッと、中はふわふわでモッチリとした食感。心の底から美味しいと思いました。毎朝、パンを食べる楽しみで朝早く目が覚めたり、もう1枚食べたいと2枚食べたり…とても幸せな気持ちで職場に向かうことができました。ただの食パンが、こんなにも人を幸せにするのかと、驚きました。どうしてもこのパンを自分自身の手で作りたい、後悔はしたくないと、思い切ってパン職人の世界へ飛び込みました。
今までの生活とは全く違うので大変でした。一番苦労したのは、まず早起き、朝2時、3時に起きる生活に慣れることでした。そして、待ってはくれないパンの発酵時間に合わせるため猛スピードでこなす作業。マラソンをしていたので体力には自信があったのですが、家に帰るのがやっと。倒れるように寝る毎日でした。
しばらくして、2か月待ちの食パンのある「ブーランジェリーレコルト」を知り、就職。不眠不休で有名なシェフで、見ていられないほどご自身を酷使されている姿を見て、なぜそこまでしてパンを作るのか?と思っていました。シェフに聞くと、「お客さんの残念な顔が見たくないねん」と。この言葉が今も心に残っています。パン屋として1番大切なことを教えていただきました。


こだわりの材料で作られた食パン。もちもちふわふわとした食感。

レコルトで経験させていただいたことで、自分自身のパン屋としての道筋がはっきり見えました。パン作りは科学だと思います。これからさらに研究がなされ、コンビニやスーパーで売られるパンはもっとおいしくなっていくのだろうと想像します。しかし、感動するパンは、食べる人を想像しながら、思いを込めて作り、マッチしたときに感動が生まれるのではないかと思います。私はその感動していただけるパンを目指していきたいと思います。

富山で起業しよう

母がリウマチと治らない病気になって家事ができなくなり、とうとう覚悟をしないといけない日が来ました。母を神戸に呼び寄せようと思ったのですが、富山から離れたくないと言うので悩みました。
パソコンで「富山県」「射水市」などで検索しているといろんな発見がありました。パン屋が少ない、共働き率が高い、コンビニが多いなどなど。「ん?ということは、忙しい女性が多いから、仕事帰りに足早にスーパーによって買い物を済ませ、パンはほとんどスーパーで買っているのか…じゃあ、焼きたてのパンを職場に届けたら、買ってくれるかもしれない!」と一筋の希望が見えました。そこで「配達をする食パン専門店」として射水市で開業することを決心しました。
パン作りの知識は身につけていましたが、起業に関する制度などは全く分かりませんでした。そんなときに「とやま起業未来塾」を知り、すぐに申込みました。
とやま起業未来塾では、全国から実際経営をされている講師の先生方からの直接の講義を受けられたり、様々な企業の見学ができます。そしてなにより自身の事業計画作成のために担当の先生がついて下さり、半年という長い年月をかけ完成させ、さらに大勢の人の前で発表するという多くの経験を積み、視野を広げることができました。

周りの人に支えられている

お店を始めて、富山県の「人のあたたかさ」を感じることが多々ありました。
お店を開業する前、とやま起業未来塾で知り合った方に食していただいたところフェイスブックで紹介して下さり、フェイスブックからの問い合わせを多く頂きました。また試し焼きを配達の方、電気の検針員の方にお配りしたところ社内、社外で広めていただき、応援してくださいました。看板もチラシもない当店が、運命的な出会いで1人、2人の方から多くの方に知っていただく事ができました。
射水市の農産物直売所「菜っちゃん」や富山県アンテナショップ「ととやま」への納品も知り合いの方からお声掛けいただいたからこそ。皆様から応援していただいているからこそ、今があると感謝でいっぱいです。


ととやまでの販売。直接豊田さんとお話しながらパンを選べます。
お土産を買いに来た方もおいしそうなパンに足を止めています。

夏限定の夏野菜のカレーパン。季節限定のパンを楽しめるのも嬉しい。

今後の目標は?

今は、工房からなかなか外に出られない毎日ですが、今後は富山の事をもっと勉強して、富山の食材を使ったパン作りにも取り組みたいです。ととやまでは、たくさんの食材に出合うきっかけになっています。
そして、様々な業種の方々と知り合い、いろんな方面から富山のいいところを発見したいです。